再心
去年のいまごろ、というより元旦からほぼ死んで(いるような状態だっ)た。
もうすぐ還暦だし、好きな人生をやったから、「さよなら」でもいいか・・
案の定無理やり連れていかれた病院の先生は「このままだと、もうじき葬式だな。」
少し楽しそうに優しく教えてくれた。
「どうする?」と言われても、何か提案してくれるのが先生じゃないの?
「なんとかしてください!」と付き添いの親族の声。
「君はどう?」は先生の声。
「この痛みの無い苦痛から抜け出たいかな・・」これが俺。
「だったら私のいうことを、絶対に守りなさい」・・・・・で、今日に到るわけだが、
そうなると「病を治す」ことより「言われたことを守る」に懸命になるのが俺。
人は辛ければ辛いほど下を向く。どんどん自分の中に入ってしまう。
少しだけ顔を上げれば違う世界がいつもあることに気が付かない。
朝日を見るのが好きになったのは三月、体が思うように動くことに感動したのは五月。
心が再び動き出し、新しい夢を見つけたくなった七月。
思うに、確かにあの時俺の人生は一度幕が下りたのだ。
今は二度目の人生をおくっているのだと思う。一度目の生き方と今とではまったく違って面白い。あの時の今は来世で、今思うあの時は前世なんだろう。
生きて来たわけでもなく生きてゆくわけでもない。今があるだけ。
だから「今」をどれだけ楽しめるのかが楽しみだ。